ソムリエとしての第一歩をソムリエとしての第一歩を
工場見学レポート

ソムリエとしての第一歩を

東京都墨田区、ここはものづくりの街。
古くより多彩多様な職人が集まり、江戸・東京のものづくりを支えてきた下町である。

今でこそ東京スカイツリーを中心に観光客で賑わうイメージがあるが、それまでは職人たちの往来が中心の職人町であった。現代でもその気質は残っていて、歴史に裏付けされた技術と伝統が脈々と受け継がれている。

その中でも、日本有数の集積地であるものづくりがある、それが「製革」、タンナーだ。革を知る上で、革のスペシャリストとしての根幹となるであろう、そんな革づくりの現場に、「レザーソムリエBasic(初級)資格試験」合格者たちが集った。

レザーソムリエの第一歩として行われた、合格者たちのタンナー工場および東京皮革技術センターを見学した様子をレポートしよう。

LEATHER LAB TOKYO produced by T.M.Y’s編

意外に知られていない?
東京の地場産業、製革業“タンナー”

「LEATHER LAB TOKYO produced by T.M.Y’s」
今回、見学会にご協力いただいたのは、羊革を得意とするタンナー「LEATHER LAB TOKYO produced by T.M.Y’s」。歴史あるタンナーが軒を連ねる墨田区の一角の中でも、2021年に新設した新工場がひと際目立つタンナー。

なめしから染色、各種加工までを一貫して行う。近隣の小学生から一般の方まで、見学会やワークショップなどにも力を入れており、本革の良さの周知にも尽力されている。

革の専門家として体験しておきたい
皮が革へと変革する現場

「LEATHER LAB TOKYO produced by T.M.Y’s」
洗練された社屋でも工場内に入ると、そこは製革工場ならではの風景が広がる。

回転するドラムからあふれる水の音、ベルトの上を表情を変えながら流れていく半裁、風に揺られなびく美しく仕上がった革たち。セクションごとに熟練の職人たちが作業に没頭していた。

そんな場内を巡りながら、T.M.Y’s代表の渡邊守夫さんに、皮が革へ生まれ変わる工程や各作業のポイントを解説していただいた。
参加者はレザーソムリエ資格を得た合格者たちであるので基本的知識は持っている。しかし、実際の現場を見て、タンナーの生の声を聞くことで、さまざまな質問が出た。
「顔料と染料のメリットデメリット」
「原皮の違いによるなめしの工夫」
「海外のなめし技術と日本のなめし技術の違い」
「ロットによって製革作業はどう変わるか」
「トレンドなど情報収集はどこから?」
「水やドラムの素材の違いでなにがかわるか」

ソムリエだからこそ知っておきたい、
現場感のある質問と答え

「LEATHER LAB TOKYO produced by T.M.Y’s」
参加者の大半がメーカーや小売業に従事する人たち。デザインや企画に直接つながる具体的な質問が多く、当然ながらこの見学会を自分たちの糧としたい気持ちを強く感じた。

すべての質問に、丁寧に答えていく渡邊さん。

なかでも印象に残ったコメントが、「日本のタンナーのなめしの特徴について」と、「革はサステナブルな素材であること」の示唆だろう。

前者は、業界・消費者が皮革素材に求める品質の違いや傾向。
後者は、誤解されやすい製革の基本、あくまでも畜産副産物であることの認知拡大が世情も含めて今こそ大切ということを、わかりやすく語っていただいた。
「LEATHER LAB TOKYO produced by T.M.Y’s」
レザーソムリエ取得応募者の中には売り場に出る人や広報セクションの方も多く、一般消費者に革の良さをどう伝えるかは今後それぞれの課題となる。

その中で、現場が本当に伝えたいことを知るという体験は貴重だ。「知識」と「体験」、そして自身の「経験」をどう組み合わせて伝えていけるかが今後重要になっていくことであろう。

見学会後半は、そんな「知識」を深めることができる「東京都立皮革技術センター」へ。

東京都立皮革技術センター編

エビデンスあるデータが、
知識のボトムアップを推進する

東京都立皮革技術センター
「東京都立皮革技術センター」は、東京の伝統的地場産業である皮革産業の振興を支える施設。

施設内には、製革に関連する設備が整っており、タンナーだけでなく、メーカーや小売業、個人の方までが革の試験や相談、さらには制作を目的として訪れてくる。
ゆえに、常に新しい情報や技術に触れることができる、ものづくりに携わる人たちにとってはまたとない有益な場所だろう。

今回の見学会では、同センターの設備紹介から、(一社)日本皮革産業連合会事務局長、元所長の吉村圭司さんによる講義が行われた。
東京都立皮革技術センター
「革」と検索すればインターネットでも多くの情報が得られる現在、しかしながらその知識が本当に正しいかを見分けることは難しいもの。

一方、同センターでは試験・研究による確かなエビデンスが蓄積されており、また講師の吉村さんは同センター元所長ということもあり、そのデータは確か。

間違いない情報の精査・伝達こそが一般消費者にとっても有益であり、その大切さをあらためて実感する講義であった。

現場で得た体験 × 知識の経験が
レザーソムリエの信頼向上につながる

東京都立皮革技術センター
今回の見学会、合格者の特典としての開催ではあったが、レザーソムリエ資格取得が、奥深い本革の良さを知ることの第一歩であることを参加者一同感じたのではないだろうか。見学後に、他のタンナーや製品工房などの見学もしてみたいなど、より知識・体験を広げたいと答える参加者も。

また、「レザーソムリエProfessional(中級)資格試験」の受験を希望する方も多く、さらなるレザーソムリエたちの育成、活躍が期待できそうだ。

より多くの人に本革の良さを伝えていく意味でも本事業のさらなる発展が望まれる。
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